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パパパ・その後

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「おとーと!」

 毎朝、春香は目覚めたと同時に何か言う。「マンマ」が多いが「くまたん」、「はいどじょ(どうぞ)」などと言うこともある。夢の続きかと私は気にも留めず、「おはよう」とは言うものの低血圧の私はすぐには目が開かない。
 ところが、夏のある朝のこと。春香の一言で私はぎょっとして目を開けた。いきなり「おとうと」と言ったのである。実はちょうどその頃、二人目ができたのではという疑いが持たれていた。上の子がお腹の中の子の性別を当てるという話を聞いたことがある。これは、もしかして・・・・・?
 その謎が解けたのは、二人目はなかったと判明した数日後のことだった。なんと春香の言いたかったのは「おとうさん」だったのである。さ行が言えないから「~さん」と言えるはずもなく、「おと・・・」まで言って、あとは引きずられる形で「おとーと」となったのだった。もちろん、それがまったく違うものを意味するなど露も知らず。そもそも弟という概念も言葉も知らないのだし、考えてみれば出来過ぎた偶然だった。あの朝、夫が先に床を離れたので、「お父さんがいない」と言いたかったのだろう。
 それ以来、春香は「おとーと!」と言うようになった。その意味も口調もおかしくて、春香がところ構わず大声で叫んでも、制するのをつい怠ってしまった。そしていつからか、それは「おとーたん」に変わった。
 それに対し、私のことは「マンマ」と呼ぶ。イタリア語ではあるが、呼ばれ始めた当初は「あらあ、春ちゃん、マンマって言ったの!」といちいち感動していた。最近「おかーたん」も発音だけはできるようになったので、一人称で「お母さんはね・・・」と言い続けてはいるが。
 どうしてこうなったかというと、夫は春香の前で私のことをマンマと呼ぶからだ。私は春香と話す時、夫のことをお父さんと呼ぶので、その結果こうなった。「おかあさん」より発音が易しいから「マンマ」というのはわかるが、「パパ」ではなくあえて「おとーと」と言ったのは、やはり一人称よりも二人称、三人称のほうがわかりやすかったのだろう。
 というように、今は何でもリピートすることによって言葉を習得している春香だが、ただ一つ例外がある。「マンマ! マンマ!」と私を探し始めるともういけない。抱っこしている夫が「マンマじゃない、パパ! パパだよ、パパ!」と言ったところで、春香の「マンマ!」は止まらないのだ。身をよじって叫び続ける。
 実はこの夫こそ、パパと呼ばれることを切望していたのだ。いくら「おとーと!」や「おとーたん!」と呼ばれても、そのことに対して感激はしていない。やはり「パパ」もリピートはできるが、しかるべき状況の中で自発的には出てこないのである。私の「おかあさん」に対しての執着より、夫のそれは激しかったらしい。
 それだけではない。最近の夫は、朝から晩までこのマンマ攻撃が繰り返される「母親全盛期」を迎え、苦悩の日々を送っているのだ。
 
(この続きは、書籍でどうぞ)


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