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恐怖のうんどうぶそく

 正真正銘の「熟睡」を私は、たった一度しか体験していない。子どもの頃バレエを習っていたが、その合宿でのこと。寝ようと横たわって目を閉じ、その直後に目が覚めた。と、それが朝の訪れだったのである。
あれがおそらく 本物の熟睡だったのだろう。
 あれほど強烈な体験は、あの時をおいて二度とない。夜を 瞬時に
飛び越え、気がつけば朝が来ていた。ぐっすり眠るということは、なんとすっきりした幸せだろう。
 私たちの中には二種類あって、苦労せず入眠できる者と、なかなか
寝つけない者とがいる。たとえば私の姉が、前者である。姉は夜に帰宅すると、化粧も落とさず寝入ってしまうことがあり、私はその様子を批判の目で眺めつつ、実はうらやましかった。週末など、姉はそれこそ
一日中眠っていられた(食事時を除く)。さらに夜になっても難なく寝ていた!  
 私はといえば、週末でも朝になれば目が覚めてしまう。起きなきゃと
思いつつウトウトしながら何時間も過ごす、あの心地よさは私だって知っている。が、病気にでもならない限り、そんなまどろみさえ私には難しい。

 4歳下の弟が生まれるまで、どうやら私は両親と 寝ていた。父親の
いびきを夜通し聞いていた記憶があるので。一定のリズムとメロディーで構成された父のいびきは、パターンがいくつかあり、同じ順序でくり返される。することがないので、じっと耳を澄ましていたら 一連のいびきを
すっかり覚えてしまった。暗闇の中をひとりで「次はガーガーだ」とか「次はピン!だ」などと考えていたのである。
 弟が生まれ、私と姉は上階の二段ベッドで寝ることになった。眠れないと訴える私に、母は目をむき、顔をしかめて言った「おまえ、それは運動不足だよ」。
 というのは私が、ぬいぐるみと遊んだり絵本を制作したり、室内遊びが好きな子どもだったから。「お外に行って 元気に遊びなさい」と
よく言われた。母の歯がゆい気持ちが今ならよくわかるが、そう言われたところで私は変わらなかった。
 「うんどうぶそく」という言葉を聞いたその時、意味はわからぬまま、なにやら恐ろしくて身震いしたのだけれど。母はまるで怪奇現象について語るような口調で 言ったのである。

 それから成長し、授業中まで寝てしまった時期もあったものの、概して私は眠れない人間であり続けた。
 夜中に目が覚めるのもまた嫌なものである。夫には初めのこそすれ、夜中に「眠れないの」と甘えることもできた。今は話しかければ嫌がられる。ちょっと動いただけで怒られる。私は何故か3時に目覚めることが多く、3というデジタル数字を見て絶望する。そして考え事を始めてしまい、もう1時間もたってしまった!と、時刻を確認しては焦りをつのらせる。
 そんなわけで、娘(10歳)がたまに眠れないと言って夜中に来ると、私はつい布団に入れてしまう。娘は決して眠りの浅い子ではない。それでもたまに暗闇が怖い、一人では寂しいと訴えてくる。長かった添い寝の弊害だろうか。
 添い寝の経験が一切ない夫は、自分のベッドで寝ろ!と容赦ない。やむを得ず私が娘のシングルベッドに行き、一緒に寝てやったりしている。

 話を戻す。そんな私が、安定した睡眠を得られるようになったのは、一昨年、朝型人間に生まれ変わってからだ。8時間睡眠にこだわらなくていいと知り、私は6時間半眠れば充分だと発見したことも 非常に大きい。
 それでも 様々な原因により、眠れない夜が たまにある。すると たちまち、過去の絶望的な気持ちがよみがえってくるのだ。先日など娘が
体調をくずしたため、私も在宅を強いられた。運動不足となり、案の定、夜中には目が覚めてしまった。
 短眠人間となった今の私には、もはや昼間に体を動かすこと以外、道は残されていない。薬やハーブティなど、子どもの頃には望み得なかった秘密兵器もあるにはある。が、運動は熟睡以外の効果も期待できる点がいい。外出が無理とわかった時点で、夜が来ないうちに、あの絶望感を思い出そう。こういう時こそ、後回しにしがちな掃除機やモップがけをしたり、あえて地下へ洗濯ものを干しに行ったりして、せいぜい体を動かそうと思った。

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COMMENTS

No title

村上さま
ありがとうございます。後日談を言ってしまえば、私の予想を裏切って娘は今も日本語でたくさん話してくれます。夫が「おまえたちは本当によくしゃべるなー」と感心するほど!しかし話すのと理解は違いますし、表現するというのもまた違うので、そこが問題となってくるのですが・・・。

今度またあらためて書きますね。

それにしても、

>できるだけ本人の好きなことをやらせたいと思う私の、これが春香に対するたった一つの切実な願いである>

いやー、これはつっ込みたくなりますね。本人の好きなことというのは、YouTubeで音楽の動画をずっと見ていることですからね。そんなこと、ずっとやらせておくわけにはいきません!!

興味深く、おもしろい。

「春香の将来の言語予想図」
はたいへん興味深く、おもしろく拝読しています。

<とすると、春香の言葉は、一体どうなるのだろう。このままいくと、春香はまた新たな言語としてドイツ語を覚える破目になる。本当にそんなことをして良いのだろうか。幼い頭に負担がかかるのではないだろうか。
 また、英語を忘れてドイツ語が第一言語となっても構わないが、それでもし日本語が維持できなかった場合、春香がドイツ語で話しかけてくるようになったら、私はどうすればいいのだろう。>
P189

想像を絶する難しい状況ですね。いったいどうなるのでしょうか?
心配です。

<もう英語は捨てるのだ。過去はもう振り返らず、未来に目を向けるのが得策だろう。
 ドイツ語は私にとって、過去の言語だったのに。まさか、ドイツ語圏に住むことになろうとは。まったく、人生とは、わからないものである>

<今後、春香の第一言語がスイスドイツ語となっても、私にはいつまでも、日本語で話していてほしい。できるだけ本人の好きなことをやらせたいと思う私の、これが春香に対するたった一つの切実な願いである>
P192

話に引き込まれていきます。

<「しょせんは他人(外国人ではなく)」なのであって、夫婦であってもすべて分かり合えるとはどのみち思っていないのである。孤独な日本人妻は多いのかもしれないが、現在夫の国でも私の国でもない、第三国にいる私としては、それほどの孤独は感じていない。孤独を感じるとしたら、それは夫も同じことである>
P193

同感です。それにしても平川さんの理解の深さ、度胸のよさに感服です。

村上 好

日本語のありがたさ。

平川さん

<本当に日本語さまさま、日本語の存在はありがたいものです。主に文章を書くときにそれを実感しますが、我が子にも日本語で話せるというのがこれまた幸せなことだと日々思っています>

生まれてからずっと日本に住んでいると、このありがたさがなかなか実感できません。意識的に、日本語のありがたさ、日本語を話せる幸福感を感じるようにしたいと思います。

そう言えば、この欄でのやりとりを英語ですることを想像してみると、伝えられる気持ちは格段に小さくなるだろうと思います。

村上 好

No title

村上さま
 いつもご感想ありがとうございます。言語は私にとって最大の関心事のひとつです。娘が生まれてからそれは加速しています。

>たとえ家族や生まれた国から離れて生きることになっても、自分をしっかり表現できる言葉を一つ持っていれば、どこにいたって強く生きていけると思う。

 この気持ちは今も変わりません。本当に日本語さまさま、日本語の存在はありがたいものです。主に文章を書くときにそれを実感しますが、我が子にも日本語で話せるというのがこれまた幸せなことだと日々思っています。

No title

michiさんへ
コメントありがとう!! やっぱりmichiさんもそうなのね。眠れない派は一緒に暮らさない限りわからないけど、実は結構周囲にいるもんなんだと思いました!
私も夜はカフェイン絶対に摂らない。午後2時を過ぎたらもう要注意です!ジョギング、私も午後や夕方ならやってもいいかなあ。短時間で運動できるから、ウォーキングより効率いいよね・・・。

No title

私も小さいときは寝付きが悪かったなぁと思い出しました。今も何かのきっかけで寝付きが悪い日が続くと辛いですね。そんなこともあって夜はカフェインは控えてます。ジョギングをすると、確かに寝付きがいいけど、一日中眠い…

『春香だより』を読んで 3

平川さん

『春香だより』で、言語とアイデンティティについての思索がとても興味深いです。

<食事も、週の半分はイタリア料理にせざるを得ない(和食も夫は好きだが、材料調達が高くつくので)。
 となると、残るは言葉だけだ。子供に日本語さえ教えられなかったら、私のアイデンティティの何もまともに継承できないではないか。もう半分意地である。>
p91

<どこに住もうが、自由に話したり書いたりできる言語を一つ持つということは、非常に大事なことだと思う。>
p93

<春香にとっての「母国語」は一体何語になるのかと、つい考えてしまう。出生国の言葉、母親の言葉、父親の言葉、いずれも可能性は薄い。となると次に移住する国の言葉か。とにかく、いつの日か自信を持って「これが私の母国語だ」と言ってほしい。
 たとえ家族や生まれた国から離れて生きることになっても、自分をしっかり表現できる言葉を一つ持っていれば、どこにいたって強く生きていけると思う。>
p94

<今は母国語である日本語を再評価したい気持ちだ。・・・とにかく日本語回帰というべきところにたどり着いている自分がいる。日本語で自分の考えを表現できるということは、私の中でますます大きな心の支えとなっているから。>
p95

生まれてからずっと日本に住み、外国語として英語を学び、日本語で考え、日本語を話していると、自分のアイデンティティを考えることが少なく、言語についてあれこれ考えることもありません。

複数の言語に囲まれていると一体どういうことになるのでしょうか。
春香さんの「言語的」成長過程を興味深く読んでいきます。

村上 好

No title

村上さま
ああ、いいですね~毎日のシエスタ。私も以前、習慣だったことがありました(娘に授乳後、一緒に寝入っていました)。今は相当疲れた時だけ午睡もとりますが、下手に眠ると夜眠れなくなるので注意が必要なんです・・・!

No title

チョロさん、おひさしぶりです!コメントどうもありがとう!!
実は私も、たまに昼間に眠くなる時があるのです。学校に通っていない今は、移動中。バスや路面電車の中で、気がつけばぶんぶん頭を振り回して眠っていたり・・・ここヨーロッパでこんなことしてる人いないので、娘にかなり嫌がられます!!でも座席に座ると、どうしても眠くなってしまうの。もう習慣になってます・・・。

眠りは楽しい

平川さん

眠りについてのつぶやき。とてもおもしろく拝読しました。
ご自分のことを語るだけでなく、家族の睡眠傾向が描かれています。睡眠ひとつとってもひとそれぞれ、千差万別なんですね。

私は「睡眠」は毎日の楽しみの一つです。というより「最高の楽しみ」。昼食後一時間たったらパジャマを着て昼寝をします。この一時間のシエスタで、ぐっすり眠り、すっきりした頭で目覚めます。世間のひとが働いているときに眠らせてもらう、という思いもあり、夜寝るときより何倍も気持ちよく、楽しいです。
そして、夜も普通の人と同じように眠ります。

運動はよい眠りに効果的だと思います。ぜひ、運動を楽しんでください。習慣にするのがいいようです。

村上 好

No title

眠れない気持ちわかりますよ。
私も夜中に目が覚めてしまうタイプです。
学生時代はよく授業中に寝てしまっていました。

やっぱり日中運動しないとダメなんですよね。
私は仕事柄一日中パソコンに向かっているので・・・だめですよね。

これから寒くなるので、益々運動不足になりますが
お互いに安眠めざして頑張りましょう!

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